ぷれこんさあと

【2019年4月-5月】

ジョークはいかが?

 ある演奏会の客席での会話。「私は、ホルンのソロが始まるといつもお祈りがしたくなりますの」「ほう、やはりホルンのソロは、敬虔な気持ちになるんですねー」「いいえ、どうかミスをしないように!と祈るのです」有名なホルン・ジョークだ。音楽家仲間の酒席ではこのようなジョークが飛び交う。聞き覚えたもののほんの一部を紹介しよう。

 さる高名な指揮者がオーケストラのリハーサルで、ヴァイオリン・セクションに向かって、「君らは、ソリストになれなかったからここにいるんだろう」さらにヴィオラ・セクションに向かっては「高校のころまでは、ヴァイオリンをやっていたが、音大に進むためには『ヴィオラに変わった方が良い』と先生に勧められたんだろ」と言い放った。ベテランの楽員がすかさず「何を偉そうに、お前さんはヴィオラで受けて落ちたくせに」。

 こういったジョーク、不思議なことにヴィオラをネタにしたものが非常に多い。これらをヴィオラ・ジョークといい、しかもヴィオラ奏者自らが面白がって収集し、語ってくれる。以下私の大好きな2編を紹介しよう。

 あるオーケストラで、長年ヴィオラの首席奏者をつとめ、アンサンブルの要として、また人間関係のトラブルも穏便に収め、大変な尊敬を集めていた老ヴィオリストが定年退職することになった。彼はリハーサルが始まる前、ロッカーを開け、扉の内側に貼ってある紙を見つめ、書いてあることをブツブツと唱えてから、楽器を取り出し、自席に着席することを常としていた。退団後、そこにはさぞかし立派な教えが書いてあるだろうと、皆がそのロッカーの前に集まり、扉を開けてみた。そこには“楽器は左手、弓は右手”。

 では次に末席奏者のジョークを。

 2週間の演奏旅行を開始したばかりのオーケストラがあった。最初のコンサートの1時間前に、指揮者が急病になり指揮ができなくなってしまった。マネージャーは急遽代役を探すが、誰も見つからない。窮余の一策と、楽員達を集め、指揮できる者がいないかと尋ねた。すると、なんとヴィオラ・セクション末席に座る新人が立候補した。マネージャーは不安を隠さず「リハーサル無しのぶっつけ本番だぞ!?」というが、彼は動じず、笑顔で「それはそうでしょう。大丈夫ですよ」。彼は見事に指揮し、超弩級の大成功をおさめた。指揮者はツアーの期間中回復しなかったので彼はそのまま指揮をし続け、公演の先々どこでも激賞され、万雷の拍手を受けた。ツアーが終わった次のリハーサルには指揮者が復帰したので、彼はヴィオラ・セクションの最後列に戻った。彼が席に着くと、隣の席のヴィオラ奏者が尋ねた。「この2週間、どこに行ってたんだい?」。

 このような誹謗中傷とも云えるジョークを、ヴィオラ弾きは何故好んで語るのか?謎解きは中面右上の「髙梨瑞紀ヴィオラ・リサイタル」の欄に!お楽しみに。

 

プラバホール 芸術監督 長岡 愼

長岡 愼

 

2019年度 第34回 松江プラバ音楽祭

  

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